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札幌家庭裁判所小樽支部 昭和39年(少)51号 決定 1964年3月04日

少年 B(昭二一・八・一〇生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、A、C、D等と共謀のうえ、昭和三九年一月○○日三時三〇分頃から午前六時頃までの間、小樽市○○町東○丁目一三番地松○猛方二階通称松○興業部事務所において、大○実(三五歳)に対して些細なことに因縁をつけ、同人の顔面、頭部を手拳をもつて殴打し、或は足で蹴上げる等の暴行を加え、よつて同人に対し顔面打撲創、左側頭部打撲創等の傷害を負わせたものである。

(罰条)

右の事実につき刑法第二〇四条、第六〇条

(処遇)

一、少年は私立高等学校二年に在学中のものであるが、既に飲酒、喫煙をしたことにより、停学処分をうけたが、更に昭和三八年一一月頃暴行により、三度停学処分をうけるに至りその結果、学校を嫌うようになり、その後退学したうえ無為徒食していたものであるところ、同年一二月末頃から小樽市内において顕著な暴力団たるてき屋○○一家△△分家松○猛の乾分Cの舎弟となり、家出をして右松田○方二階松○興業事務所に右暴力団の構成員と共に起居し、右松○が暴力団の資金源として経営する飲食店「○ちやん」の仕事を手伝うようになつた。

二、ところで少年の保護者には一応の保護能力があり、又少年の観護に対する熱意もうかがわれなくはないのであるが、審判廷におけるその挙指些か非礼のそしりをまぬがれず、従つてその熱意も保護者の意図は別として少年の保護を全うするという意味からすれば実際上の効果を導きうるかどうか極めて疑問であり、更に本件直後保護者が少年を前記松○興業事務所より一たん手元へ連れもどしたにもかかわらず、翌日また少年は、同所へ戻つてしまつたこと、少年は既にこれまで二度にわたつて当裁判所に係属した非行歴を有し、その都度保護的な措置をとられていたにもかかわらず、さらに反省の色なく本件の如き、悪質な非行を犯すに至つたこと、少年には犯罪集団への親和性が相当顕著に認められること、少年の性格が攻拳性が強い反面お人好なので、いくじがなく、軽はずみであるという特性を持つていること、本件犯行についても、改俊の情十分とはいえないことなどを併せ考えると保護者の述べている如き社会資源が用意されているというだけではこれに少年を託して補導更生の実をあげることを期待できず、それ以に上適切な社会資源もない本件においては、この際少年を中等少年院に収容のうえ、その犯罪性を矯正し社会性の涵養を図る外ないものと認められるから、少年法第二四条第一項第三号を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 佐藤寿一)

参考

抗告審決定(札幌高裁 昭三九(く)八号 昭三九・六・二五第三部決定 法定代理人 父抗告)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は抗告人提出の抗告申立書および附添人提出の抗告申立理由補充書記載のとおりであつて、その要旨は、少年の非行歴は何れも軽微な事件で不処分となつており、本非行事実も少年は主導的役割を果たしたものでなく、単に二、三回手拳で殴打した事実があつたに過ぎず、高校中退後不安と焦躁から安定を求めようとして不良集団に加入したものの、その接触期間は僅か二〇日にすぎず、未だ反社会的集団に対する親和性を有するものとは認められず、少年の更生に余力を儘す態勢が整えられている社会資源を活用することなく少年の性格的欠点を云々して直ちに少年院送致を言渡した原決定は明らかに処分の著しい不当があると云うにある。

よつて、本件少年保護事件記録および少年調査記録を精査すると、少年は既に二度家庭裁判所に係属した非行歴を有し、その都度保護的な措置をとられていたにもかかわらず、本件非行を犯すに至つたこと、その内容も悪質であつて決して抗告人の主張の如き軽微なものとは認められないこと、喫煙、暴行等のため私立高校在学中三度停学処分をうけ高校生活の適応にも失敗して中退し、反社会的集団の生活の中に安定感を得ようとして小樽市内において顕著な暴力団である○○一家△△分家松○猛の乾分Cの舎弟となり、その構成員等として起居を共にしていものであり、本件直後、親元へ連れ戻されたにもかかわらず直ちにまた松○興業事務所に戻つてしまつたこと等よりみて、少年は性格的にも犯罪集団への親和性がみとめられること、△△町在佐の母方伯母あるいは浦和市在住の実兄等利用できうる社会資源がないわけではないが、少年の性格及び行動傾向、生活歴からみて少年を指導するに足りるとも思われず、結局少年の犯罪性を矯正し、社会性を涵養するためには、この際施設に収容して矯正教育を施す以外に適当な方策は見出し難いものと考えられる。

してみれば、原審が本件非行の態様および少年の年齢等を考慮のうえ、少年を中等少年院に送致した措置は相当であり、これをもつて著しく不当であるとする論旨は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に則り、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 半谷恭一)

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